備忘録

徒然なるままに。

余談:ゲームにおけるストレスの「有用性」

今回は趣味の話を少し。

ゲームというのは少し特殊なコンテンツで人間のストレスをコントロールすることで様々な効果を発揮する。
一般にストレスはかからなければかからないに越したことはないし何なら発散させてほしいものだと思う。趣味としてよく上がるであろう例えば旅行やライブ鑑賞、スポーツ観戦等々…何らかの理由でストレスがかかってしまうことはあっても基本的にはストレスは解消され得るものである。
ところがどっこい、ゲームはプレイヤーに適度のストレスをかけることで面白さを演出する。逆に言えばストレスの全くないゲームは面白くないという話である。

今回は私がよくプレイするポケモンSV(スカーレット・ヴァイオレット)を題材にゲームにおけるストレスの形態について考えていることを書き残そうと思う。
以下の論はあくまで主観に基づくものであって何らかの理論に基づいたものではない、1ゲーマーの感想だと思って温かい目で読んでいただきたい。

ポケモンは子供から大人まで幅広い年齢層の人々にプレイされるゲームだ。こんなゲームにストレス要素が?と思うかもしれないが明確に存在する。挙げ始めたらキリがないが軽く列挙すると
・対戦での勝ち負け
 ・急所負け(=運負け)
ポケモン捕獲(言い方がよくないな、ゲット?)
 ・色違い捕獲
 ・個体厳選
 ・レイドバトル(SVに限る)
ひとまずこんなところでいいか。
ポケモンにおいては大きく分けて対戦・捕獲(厳選)においてストレス要素が盛り込まれている。とりわけ現在のポケモンはストーリー攻略よりもオンライン対戦に比重が重く置かれているため対戦によるところが大きい。
対戦におけるストレスの働きはシンプルで勝てば発散、負ければストレス負荷である。(以下発散をマイナス、負荷がかかることをプラスとか呼ぶ)
捕獲は伝説ポケモンとか捕まえる時が分かりやすいか。ボール投げても捕まらずはじき返されるあの瞬間にプラス、捕まればマイナスといったところである。
ただゲームにおけるストレスのやり取りは勝ち負け・捕まる/らないのYes/Noの二択のみに依らず他にもいろいろな形でポイントが用意される。それがそれぞれの下にサブセクション的に書いたもので、例えば対戦では急所にあたりダメージが増すことが敗因となる急所負けなどがある。これらは乱数的に用意されることが多い。個体厳選なんかもその一つである。
ただし、勿論これらをストレスと認識するかは人それぞれである。負けても全くストレスを感じないメンタル鋼タイプな人がいてもおかしくはないし色違いを永遠に粘り乱数との果てなき戦いを繰り広げる人もいる。ただゲーム設計の段階である程度こうしたストレスを如何にコントロールするかは設定されているはずである。

ゲーマーとしてやっていて楽しいと感じるゲームはこうしたストレスが適切にかかり適切に発散されるゲームである。これはポケモンに限らす多くのゲームに言える。
これが分かりやすいのはエルデンリング(フロムゲー、4にげー)かもしれない。強い敵に何度も挑み負けても勝てるようになるまであれこれ試行錯誤する。数時間やっていると少しづつ相手の動きが見えるようになってきて糸口が見え始めてくる。倒せた時の爽快感は格別である。
これも敵の強さ=ストレスがかかってこそ倒した時の達成感が増していると言えよう。

先に述べたように何をストレスと感じるかもその閾値の加減も人それぞれではあるが、ゲームは閾値ギリギリまでストレスがたまりつつも閾値を超える直前でそれが発散されるその瞬間にこそ最大の爽快感を生む。あえてストレスをためることでそれが発散される瞬間により大きな価値をもたらす。上げて落とす戦法である。ジェットコースターみたいな。

ポケモン閾値ギリギリを責めるゲームではなく上げて落とすを繰り返すことで細かく爽快感をもたらすゲームで、エルデンリングはギリギリまでストレスをかけて一気に落とすことで大きな爽快感をもたらすゲームと言い換えられる。
後者の設計は非常に難しいだろう。ストレスの閾値が低い人にはまず受け入れられないからである。爽快感を経験する前にゲームを手放すだろう。これも一つ万人受けするかどうかのラインであり、基本的には前者のように細かく上げて落とすを繰り返すゲームが多い。ポケモン以外にもFPSゲームもこれに近いだろう。敵を倒せばマイナス、倒されればプラス。スプラトゥーンのように1試合で何回もリスポーンするようなゲームは1試合の中でこれを何度も繰り返すのである。

さて、ここまでゲームにおける「意図された」ストレスについて書き連ねた。ストレスはかからないに越したことはないがゲームにおいてはそれが更なる爽快感を与え効果的に働く場合がある。しかしゲームにおけるストレスとは必ずしも意図されたものばかりかかるわけではない。
例えばローディングが長い、画質が荒い、操作が直感的でない、バグが存在する等々である。何度も書き連ねているようにどれほどストレスを許容できるかは人によるがこれらは気になる人はとことん気になるものである。
今回、冒頭でなぜポケモンを取り上げたか。それはポケモン最新作がストーリーがよくできているがゆえにこうした意図されないストレスが目立ってしまっていると考えているためである。もっと端的に言うとただの愚痴である。
個人的にポケモン最新作で気になっているのは(修正済みも含む)対戦におけるカメラワークや技相性の表示関係、テラピース周り、ボックスの操作性、対戦画面までの導線の長さ辺りである。
ここでは最後に書いたことに触れる。ポケモンは他のRPGに比べてもストーリーはそこまで長くはない。またセーブデータも一つしかないため基本的には周回性がない。従ってプレイヤーはストーリーが終われば厳選か対戦を楽しむことになり、大多数の人がオンラインでの対戦・ランクマッチをプレイすることになると思う。むしろそのほうが全体的なプレイ時間としては多くなると思う。だが前作剣盾と比較しても気になるのがその対戦画面まで行くのがやや面倒なことだ。もしかしたら気づいていないショートカットでもあるかもしれないが前作に比べて1,2画面増えていてかつロードも長い。
そんなことで何を言っているのかと思われる方もいるだろうが個人的にはよく分からないしとても気になるのである。例えるならソシャゲで課金できるショップをわざわざ隠すようなものである。課金してガチャ引きたいのにどこで課金するかよく分からない、なんてことはソシャゲにとって死活問題である。要はストーリークリア後のメインコンテンツであるはずの対戦要素が表に出ていないのが違和感なのである。

こうした細かい違和感はゲームにとっては致命的になりかねない。この違和感は先に述べたストレスの一種となり得るのである。例えばバグ一つ存在しそれが修正されなければプレイするたびに快適なプレイを阻害するストレスが付きまとうのである。すると意図されたストレスのみの勘定では釣り合っていたのに余計なストレスがかかってしまい閾値を超えてしまうことが起こり得る。
これがCSゲーならまだしもソシャゲではもっと深刻で運営存続の危機を迎えかねない。しかも現在のゲームはどれも良く作られていて自由度も高く、さらに基本プレイ無料のゲームが浸透していてそうしたゲームに触れる機会も増えるためこうした意図されないストレスの存在は非常にシビアなものと言える。

今回はたまたまポケモンを例に挙げたがこうした事象はどんなゲームにも起こり得る。さらに正直自分としてはポケモンのこうした意図されないストレスをさほど気にしているわけではない。それは、恐らく読んで下さった皆さんが思っているように「嫌ならプレイしなければよい」からである。実際、現在は剣盾発売当初の同時期よりプレイ機会は控えめになっている(まぁこれは対戦画面云々じゃなくテラピースが原因なんだが)。ただ、私はそれでいいがゲームはそれでいいのだろうか。

実はこの文章はいつか自分がゲームを制作するときのための備忘として書いている。現在ソシャゲを見れば多くのゲームがリリースされてはサービス終了していく。それだけ競争は激しく少しでも落ち度の目立つゲームは見向きもされなくなっている。まさに「嫌ならやめればよい」からである。
ゲームを作る際にバグが生じるのは仕方のないことである。人間が作っているものなのだからエラーの一つや二つあっておかしくはない。だからこそUIやデザイン、ゲームバランスや設計段階で無駄なストレスがかかることは出来るだけ排除されなければならない。制作側の事情の押しつけはプレイヤーの知ったことではない。プレイヤー目線で適切なストレスコントロールが実現できているか、基本的なところを抑えられたし。そう願ってやまない。